2026年8月5日お金と心
同じ1万円でも幸福度は変わる?お金の使い方5つを数字で比べてみた
僕は長いあいだ、お金持ちになりたい、とばかり思っていました。
20代の頃は、給料が入った日にはもう財布が軽いです。貯金はゼロで、借金もありました。欲しかったのはお金そのものというより、贅沢のほうだった気がします。
考え方が変わったのは、お金の勉強を始めてからです。増やし方より先に、使ったあとに何が残るかを見るようになりました。
この記事で考えたいのは、そこです。同じ1万円でも、あとに残るものは変わるのでしょうか。
動画では、5つの使い方を順番に見ました。ここでは同じ5つを、僕の見え方の順で並べ直します。数字の出どころは、記事の終わりにまとめました。
貯めた分だけ安心が増える、とはいきませんでした
日本の家計を2年間追いかけた調査があります。貯蓄が多い人ほど翌年に幸福だった、という関係は出ませんでした。順番は逆でした。先に幸福だった人が、あとで貯蓄を増やしていたんです。
これは調査に参加した人たちの平均で、僕やあなたの家の数字ではありません。
はっきり出ていたのは、借金のほうです。借金を抱えた低所得の人たちを対象にした、海外の調査があります。借金の口座がひとつ減っただけで、強い不安を示す人の割合が11ポイント下がりました。
僕も、借金を減らすところからでした。
仕事の関係で、お金を持っている人と接することがあります。お金がある人ほど穏やか、とは限りません。そう感じる場面に、何度か出会ってきました。
だから、貯金をやめる話ではありません。まず暮らしの安心を守ります。その先に残ったお金を、どこに置くか。ここから先は、その話です。
足りない額の出し方は老後2,000万円の記事に書きました。
ひとつめ。時間は、行き先を決めないと戻ってこない
1,070人を2つに分けて、片方にだけ時短サービスを配った実験があります。幸福度の差は、出ませんでした。
5つのなかで、僕がいちばん驚いたのはここです。時間を買えば幸せになる、という話を僕はずっと信じていました。
意味がない、とは読みませんでした。行き先の決まっていない時間は、うまく使えません。僕はそう受け取っています。
家事代行を頼むと、1回3時間で1万1,350円ほどかかります(大手1社の料金からの編集部試算・交通費込み)。その3時間を誰と何に使うか。決めておきたいのは、そっちのほうです。
ふたつめ。モノは17日残って、体験は0日で消える
「モノより思い出」とよく言われます。141の研究をまとめた分析でも、体験のほうがわずかに上でした。ただ、その差は小さいものでした。
面白いのは別の数字です。買って1か月後も「まだ使っている」日数を数えると、体験は0日、モノは17日でした。
体験は記憶に濃く残り、モノは手元に長く残ります。どちらが上という話ではなく、土俵がちがうだけでした。
条件もひとつあります。ひとりで完結する体験では、幸福の差が確かめられていません。
「モノより思い出」も「時間を買えば幸せ」も、条件が抜けると立たなくなります。5つを並べて、僕がいちばん腑に落ちたのはそこでした。
みっつめ。効いたのは、実際に誰かのために使ったときだけ
大きな追試があります。実際に人のために買い物をした712人では、はっきり差が出ました。人のために使った過去を思い出しただけの1,950人では、差はゼロでした。
思い出すだけでは動きません。ここも意外でした。
では40代は、人にいくら使っているのでしょうか。
40代の交際費(人と会うためのお金)
月1万464円
全年齢平均は月1万6,750円。総務省 家計調査2025年平均(2026年2月公表・用途分類)
平均の6割ほどです。外食には月2万2千円ほどを使っているのに、人と会うためのお金だけが細いです。僕が引っかかったのは、この落差でした。
昔の僕は、ギャンブルと見栄のおごりにずいぶん使いました。あのお金のことは、ほとんど思い出せません。誰かと一緒に使ったお金のほうは、今も覚えています。
断れずに贈る、断れずにおごります。そういう支出は別ものです。見栄でおごれば幸福が上がる、と示した研究ではありません。
増やすなら金額ではなく、顔が見える相手と会う回数のほうだと思います。
よっつめ。毎日にすると、楽しみは固定費になる
ひとつ白状しておきます。「少し断つと、また美味しく感じる」で知られる実験は、参加者が55人でした。13年のあいだ、追試は出ていません。ここは、家計の数字と僕の実感で書きます。
楽しみの値段は、静かに上がり続けています。Huluは2026年10月1日から、通常の決済で月1,026円が1,320円になります。
サブスクは、入った日をいちばん忘れます。僕は金額より先に、いつから入っているかを見ます。1年以上たっているものから、いったん外して様子を見ます。
我慢の話ではありません。見たい作品があるときだけ入る、土曜の夜だけにします。そういう形もあります。
らんたん
同じ1万円でも、出す前に置き場所を決めておきたいんです。
来月の私が困らないなら、その分は使っていい。そう決めてから比べると、少しだけ早く選べます。
いつつめ。払い終わったあとに、何が残るか
分割払いは、払う回数が先に決まります。リボ払いで先に決まるのは、毎月の支払額のほう。残高がなくなるまで続く形なので、自分で見にいかないと全体が見えにくくなります。
金利も、いま動いています。利息の上限は法律で決まっていて、借りる額に応じて年15%から20%。その幅の中で、実質年率(1年あたりの利息の割合)を15%から18%へ動かすカード会社が出ています。
「リボはたしか15%くらい」の記憶のままなら、一度だけ確かめる価値はあると思います。
勧める話でも、やめさせる話でもありません。買う前に、どう払い終えるかまで決めておきます。僕がこれをいつつめに置いたのは、そういう理由です。
足りないもので選ぶと、答えは入れ替わる
動画で出した逆転表を、ここに残しておきます。番号は動画で並べた順のままです。見方は、いま自分に足りないものの行を探すだけ。
| いま足りないもの | 合いやすい使い方 | 「誰かと」に変えると |
|---|---|---|
| 時間 | その1 時間を買い戻す | 空いた時間の行き先を「人との時間」にする手もある |
| 残る思い出 | その2 モノと体験の間 | ひとりの体験より、誰かとの体験に |
| 人とのつながり | その3 誰かのために使う | もともと「誰かと」の使い方。研究の裏づけがいちばん厚い |
| 日々の楽しみ | その4 楽しみを薄めない | 「毎日ひとりで」を「ときどき誰かと」の特別な回にする手もある |
| 支払いの見通し | その5 払う順番を決める | ここだけは、ひとりでも答えが同じ |
5つ全部をやる必要はないと思います。足りないものが変われば、選ぶ行も変わります。
ひとりでやるか、誰かと関わるか。ここを動かすと、行の中身のほうが動きます。
僕がいい買い物だったと思えるのは、金額ではなく、あとから相手の顔が浮かぶ買い物でした。
レジの前で、僕が自分に聞くこと
買う前の問いを、5つだけ並べます。
- 自分の時間は増えるか。減らすだけの買い物になっていないか
- 1か月後も使っているか。思い出せる形で残るか
- 顔の見える相手との関係が、少しよくなるか
- 慣れてしまって、雑な支出になっていないか
- 払い終わったあと、残高のほかに何が残るか
点数はつけなくていいと思います。僕が実際に聞いているのは、みっつめだけです。
当てはまらない人もいます。生活費の予備がまだない人、返済が途中の人は、そちらを先に整えるほうが安心に近いはずです。ひとりの時間こそ足りない時期の人に、「誰かと」は向きません。断れずに贈る・おごる支出が多い人なら、増やす話ではなく線を引く話になります。
今週ひとつ試すなら、僕はみっつめにします。5つのうち、大人数の追試まで確かめられていたのはここだけでした。それと、僕自身の記憶に残っていたのが、その使い方だけだったからです。
誰かのために、1回だけ使ってみます。金額はコーヒー1杯分でかまわないと思います。追試で差が出ていたのは、金額よりも相手の顔が見えるかどうかでした。
これは僕の選び方です。正解ではありません。今週は何もしない、という置き方もあります。
同じ1万円が軽く感じるのは、値上げだけが理由ではないのかもしれません。あなたの今月の1万円は、どこに置きますか。
読んでよかった本は、おすすめのページにまとめています。
この記事の数字が、どこから来たか
データの基準日は2026年8月3日です。ここに並べたのは平均値と実験の結果で、あなたの家計や幸福を約束する数字ではありません。制度や料金は、これからも更新されます。
- 総務省「家計調査 2025年平均」(2026年2月公表・二人以上の世帯・世帯主40〜49歳・用途分類・消費税込み)。外食 月22,417円/交際費 月10,464円(全年齢の平均は月16,750円)
- 家事代行の料金: 大手1社(CaSy)の公式料金(2026年8月3日確認・税込み)をもとに、3時間+交通費で編集部が試算
- サブスクの料金とカードのリボ実質年率: 各社の公式告知(2026年8月3日確認・税込み)。決済経路や利用状況で変わります
- 利息制限法の上限金利: e-Gov 法令検索で条文を確認
- Whillans & West (2022)=時短サービス1,070人の実験/Weingarten & Goodman (2021)=141研究の分析
- Weidman & Dunn (2016)=体験0日・モノ17日/Aknin ほか (2020)=712人・1,950人の追試
- Mimura (2023)=貯蓄と幸福の日本のパネル調査/Ong ほか (2019)=借金と不安(シンガポールの低所得層対象)
- 効果の大きさや条件は、研究によって異なります
お金と時間の配分を考える一冊
お金を何に使うか考えると、時間をどう使いたいかにもつながります。『限りある時間の使い方』の紹介では、予定を詰め込む前に、大切にしたいことを選ぶ視点を取り上げています。
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