2026年8月26日
貯金と投資、どっちに回す?毎月2万円を27年で比べてみた
毎月の残りが少しだけ出た月。この2万円を口座に置いたままにするか、つみたてに回すか。手が止まったこと、ありませんか。
僕は昔、そこで迷わず増やすほうへ寄せていました。資格をとるために取っておいたお金まで、投資に回したんです。
払う日が来て、手元は空でした。数字の上では増えていたのに、その日は使えません。
足りなかったのは金額ではなく、「このお金を使う日はいつか」という一行だったと思っています。
毎月同じ2万円を、貯金とつみたてのどちらに置くか。この記事では3つの物差しで比べます。連動する動画の文字版に、動画では出せなかった「先に何か月分を貯めるか」の比較を足しました。
読み終えたときに、自分がどの行に当てはまるかを1つ選べる形にしています。答えをひとつに決める記事ではありません。ぷにゃ・らんたん・ぱぱんの3人にも、同じ2万円の置き先を順に語ってもらいました。
何で比べるか、先に3つ決めます
物差しを後から足すと、結論に都合のいい軸ばかりが残ります。先に出しておきます。
- 軸1 使う日 — そのお金を、いつ使う予定があるか
- 軸2 増える力 — 27年でどれだけ差がつくか
- 軸3 出しやすさ — 急に要ったとき、すぐ出せるか
商品をどう選ぶか、手数料がいくらかは、今回は見ません。軸を増やすほど、読む人は自分の行を選べなくなります。
今回の架空モデル
この記事の計算に使う条件です。
・38歳・夫婦2人・共働き・賃貸
・65歳までの27年間、毎月2万円を続ける(元本は合計648万円)
・生活費は月26万円。6か月分にあたるのが156万円
・貯金は年0.306%の金利。利息にかかる税20.315%を引いて、年0.2438%で計算しました
・つみたては年3%(感度として年5%も見ます)。NISAの枠内で、増えた分は非課税とします
・手数料、値動きの上下、物価の変化は入れていません
※制度や選択肢を比べるための架空の条件です。実在の人物・数値ではありません。
月26万円という置き方の根拠は、総務省の家計調査(2025年平均)です。総世帯の消費支出が月25万9,880円だったので、そこから丸めました。全国の平均であって、あなたの家に要る額ではありません。ご自分の生活費に置き換えて読んでみてください。
27年でついた差は、約327万円
27年つづけた元本は648万円です。
貯金だけに置くと、65歳の残高は約670万円。増えたのは利息の約22万円だけになります。
つみたてに回した場合は、年3%で計算して約997万円。差は約327万円です。
年5%で置き直すと約1,366万円まで伸びます。利回りの置き方ひとつで、答えは大きく動きます。
この997万円は、「そうなります」ではなく「年3%と置けば、そうなった」という数字です。読むときは、その一段だけ引いてみてください。
毎月2万円の置き先を2つ
| 貯金だけ | 全部つみたて | |
|---|---|---|
| 5年後 | 約121万円 | 約129万円 |
| 27年後 | 約670万円 | 約997万円 |
| 元本割れ | ない | ありうる |
| 急な出費 | すぐ出せる | 売って出す |
上の2行が残高、下の2行が使い勝手です。どちらかが勝つ表ではありません。強い時期が違うだけです。
前半に効いているのは出しやすさ、後半に効いてくるのが増える力。同じ2万円なのに、強みが途中で入れ替わります。
同じ数字を、20代前半でアルバイトをしている人が聞いたらどう響くか。えんのカウンターで、ぷにゃはこう言っていたそうです。
ぷにゃ
27年後の話、
ぼくにはまだ遠いなあ。バイト代は月で揺れるから、
谷の月も入れて見ないと。置き先を決める前に、
その谷を先に測りたいです。
収入が月ごとに動く人には、平均の残りより、いちばん少ない月の残りのほうが現実に近いはずです。軸1と軸3が先に効いてくる立場、と言い換えてもいいかもしれません。
物価のことも書いておきます。日本銀行は物価上昇率2%を目標に掲げています。実績でも予測でもありませんが、置いておけば価値まで同じ、とは限らないという話です。
この章の金額は、上に置いた条件だけを使った単純計算です。つみたては毎月末とし、つみたては年3%、貯金は年0.2438%の複利で出しました。手数料も、値動きの上下も、物価の変化も入っていません。将来を保証する数字ではありません。
最初の5年だけを切り取ると、どう見えるか
差は最後にまとまってやってきます。前半は、ほとんど動きません。
最初の5年で、貯金とつみたてに開く差
約8.6万円
毎月2万円、つみたては年3%で置いた場合の差(この記事の条件)
5年で約8.6万円。円に直せば8万6,000円で、1年あたりにすると2万円に届きません。
残高そのものは、5年目で貯金が約121万円、つみたてが約129万円です。
10年目でようやく約37万円、15年目で約87万円、20年目で約165万円。ここから、増えた分が増える力がはたらきはじめます。
この時期なら、出遅れても取り返せない差にはなりません。
3年目の場面も置いてみます。残高は貯金で約72万円、つみたてで約75万円。金額だけなら、つみたてが約3万円多くなります。
そこへ、車の修理や入院で急に50万円が必要になったとします。
貯金の72万円なら、口座からそのまま引き出せる金額です。つみたての75万円のほうは、いったん売って現金に替えてから使います。
相場がそのとき2割下がっていれば、評価額は約60万円。50万円は出せますが、下がった日に売る形になります。
金融庁の資料には、過去の実績として、保有が5年だと元本を割った例が示されています。同じ資料の中で、20年に延ばすと年率2〜8%に収まっていました。
将来の確率ではなく、過去にそうだったという記録です。それでも、短い期間ほど振れ幅が大きい、という手ざわりは伝わってきます。
前半の差がこれだけ小さいと、受け止め方は人によって変わります。数字の読み方は同じでも、抱えている予定が違えば置き先も動くからです。
比べるのが得意で、結婚資金という目標を持っている人ならどうか。独身で一人暮らしのらんたんは、こんな言い方をしていたそうです。
らんたん
前半の差がこれだけなら、
急がなくてもいい気がします。ただ私、結婚資金を使う日が
まだ決まっていなくて。決まるまでは口座に置いて、
決まってから動かしたい。
使う日が読めない目標を持っていると、軸1が最初に効きます。らんたんの置き方は、金額の比較ではなく日付の話になっています。
先に貯める月数で、65歳の残高が動く
ここからは、動画に入れられなかった部分です。
先に貯める月数を変えると、つみたての開始時期がうしろへずれます。毎月2万円ずつしか貯まらないので、目標が大きい行ほど出発が遅くなるからです。
見るのは右の2列で足ります。65歳にいくら残るかと、全部つみたてに回した場合との差です。
| 先に貯める額 | 貯まるまで | つみたての期間 | 65歳の合計 | 全部つみたてとの差 |
|---|---|---|---|---|
| 貯めない(0か月分) | — | 27年 | 約997万円 | — |
| 3か月分(78万円) | 3年3か月 | 23年9か月 | 約913万円 | 約84万円少ない |
| 6か月分=半年分(156万円) | 6年6か月 | 20年6か月 | 約844万円 | 約153万円少ない |
| 12か月分(312万円) | 12年10か月 | 14年2か月 | 約747万円 | 約250万円少ない |
月数を増やすほど、65歳の残高は小さくなります。それでも、いちばん下の行に約747万円は残ります。ゼロにはなりません。
J-FLECの教材は、生活防衛資金の目安を「3か月分から1年分」と示しています。表の3か月・6か月・12か月は、その幅の下・まん中・上をそのまま取ったものです。
半年分を先に持つと、最後は約153万円少なくなります。6年6か月かけて156万円をつくり、そこから65歳までは手元に置いたままにする場合の数字です。
この約153万円が、半年分を持っておくことの値段になります。高いか安いかは、金額のほうでは決められないと思います。
売上の波がある自営業なら、どう受け止めるか。カウンターの向こうで、ぱぱんはこう言っていたそうです。
ぱぱん
谷の月を先に見るのは、
僕も同じです。うちは自営で、
売上の落ちる月がありますから。半年では、僕には短い。
1年分に近いほうが眠れます。長期で見れば、だけどね。
収入の振れが大きい人ほど、先に置く月数は長くなりやすいはずです。ぱぱんの選び方は、表のいちばん下の行に近いところにあります。
今の貯金が何か月分かで、行き先は入れ替わる
毎月2万円という金額が同じでも、今の手元の額しだいで置き先は入れ替わります。順番までそろうわけではありません。
貯金の額を、月の生活費で割ってみてください。出てきた数が、次の表であなたの行を探す手がかりです。全部を読む必要はありません。
| 今の貯金 | まず置く先 | 理由 |
|---|---|---|
| 生活費の1か月分もない | 全部を貯金へ | 急な出費で取り崩すと、続けること自体が止まりやすい |
| 3か月分くらいある | 半年分まで貯金、そこからつみたて | 目標が近く、遅れは数年でおさまる |
| 半年分以上ある | つみたてへ回してよい | すぐ動かせるお金は、もう手元にある |
| 5年以内に使う予定が決まっている | その分は貯金でよける | 5年という短さでは、過去に元本を割った例がある |
2つの行にまたがる人もいると思います。その場合は、上にある行から先に片づけるほうが迷いは減ります。
先に置く月数と、毎月動かす額。この2つは切り離して決められます。一方を選んだら他方を捨てる、という形にはなりません。
行が決まったら、次に見るのは金額のほうです。
あなたが毎月出せる額なら、27年後はどうなる?
年3%で毎月つみたてた場合の複利計算です。値動き・税金・手数料は入れていません
月2万円のところを月3万円に動かすと、27年後がどれくらい変わるか。スライダーで確かめてみてください。動かしてみると、毎月の額が答えをどれくらい動かすか、手ざわりでつかめると思います。
金額を変えられない月があっても、順番のほうは先に決められます。
この順番が合わない人
ここまでの並べ方は、全員に当てはまるものではありません。合わない条件を4つ書いておきます。
毎月が赤字なら、置き先より先に、出ていくお金のほうです。つみたてを止めるかどうかの話にもなりません。僕がやめた5つは貯金ゼロから100万円までの話にまとめました。
収入の振れが大きい人や自営業の人には、半年分だと短いことがあります。1年分へ寄せたほうが、夜は眠りやすいかもしれません。
もう半年分を超えている人は、この順番を終えています。ここから先は、使う日ごとにお金を分ける段階に入ります。
教育費や車の買い替えのように、使う日が5年以内に決まっているお金は、半年分の外側によけておいてください。
老後のお金も、この「生活費の何か月分か」という物差しで見られます。資産を生活費で割ると何年もつかは、3,000万円が何年分かの話で試算しています。
僕は、半年分を先に置きます
ここからは僕の考えです。僕なら、生活費の半年分を先に貯金でつくって、そこから先は無理のない額をつみたてへ回します。
理由は、続けられるかどうかを最優先にしたいからです。手元が薄いままつみたてを続けると、急な出費が来るたびに売る側へ回ります。その日は、こちらでは選べません。
その代わり、最後の残高は約153万円ぶん細くなります。承知のうえでの選択です。
この置き方が合うのは、家計がわずかでも黒字で、5年のうちに大きな支出の予定がない人だと思います。前の章の4つに当てはまる人には、合いません。
これは僕の選択で、正解ではありません。選ぶのは、あなたです。
冒頭の問いを、少し変えて返します。「貯金と投資、どっちに回すか」ではなく、「この2万円を、いつ使う予定があるか」。
3人の置き先が違ったのは、金額の読み違いではなく、使う日と収入の形が違ったからでした。
僕にとっては、勝ち負けではなく順番の話でした。
使う日がまだ決まらない月があっても、困りません。決まるまで口座に置いておくのも、ひとつの置き方です。
貯めたお金には、いつか使う日が来ます。そのとき「いくら売るか」をどう決めるかは、NISAを教育費で売るときの話で扱いました。
数字の出どころ
金額は万円単位で四捨五入しました。年3%、年5%、下落2割という置き方は、答えがどう動くかを見るための仮定です。予想ではありません。
特定の商品をすすめるものでも、個別の投資助言でもありません。将来の結果を約束する数字ではないことも、あわせて書いておきます。NISAの枠の管理は計算に入れていません。
- 貯金の年0.306%: 日本銀行「預金種類別店頭表示金利の平均年利率等」2026年8月。毎月15日時点の店頭表示金利を単純平均したもので、特定の銀行の適用金利ではありません。 https://www.stat-search.boj.or.jp/ssi/mtshtml/ir02_m_1.html
- 利息にかかる20.315%: 国税庁タックスアンサー No.1310。利子所得は源泉分離課税です。本文の貯金は、これを引いた年0.2438%で計算しました。 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1310.htm
- NISAの枠内で増えた分に税金がかからないこと・非課税保有限度額1,800万円: 金融庁 NISA特設ウェブサイト(2026年8月時点)。制度は今後変わることがあります。 https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/know/index.html
- 保有5年で元本を割った例・20年では年率2〜8%: 金融庁の説明資料(家計の安定的な資産形成に関する有識者会議・2017年2月3日)7ページ。1985年以降の実績を重ねて集計した過去の記録で、将来の確率や保証ではありません。 https://www.fsa.go.jp/singi/kakei/siryou/20170203/03.pdf
- 「保有期間が5年ではマイナスリターンも発生する」: 金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 23ページ(2019年6月3日)。 https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/market_wg/siryou/20190603/01.pdf
- 生活防衛資金の目安「3か月分から1年分」: J-FLEC(金融経済教育推進機構)の教材「第5回 ライフプランを描く①」17ページ。本文の3か月・6か月・12か月は、この幅の中の例です。 https://www.j-flec.go.jp/wpimages/uploads/collaborative-courses005_202412_2.pdf
- 生活費の置き方(総世帯の消費支出 月25万9,880円): 総務省統計局「家計調査」2025年平均(2026年2月6日公表)。全国の平均であり、各家庭に必要な額ではありません。 https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/pdf/fies_mr-y.pdf
- 物価上昇率2%: 日本銀行「物価安定の目標」。金融政策の目標値で、実績や予測ではありません。 https://www.boj.or.jp/mopo/outline/target.htm
長く続ける基準を考える一冊
貯金と投資の配分を決めたあと、相場が動いても戻れる基準を持ちたいときは、『敗者のゲーム』の紹介も参考になります。短期の値動きから少し離れ、資産配分と長期計画を考える本です。
紹介先のおすすめページには広告が含まれます。