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2026年8月24日

教育費のためにNISAを売っていい?「いくら売るか」を200万円の例で計算してみた

子どもの合格が決まった冬。学校からの納付の案内と、証券口座の画面が、同じ机に並んでいます。

案内のほうには、3年でおよそ200万円。画面のほうにも、積み立ててきた約200万円。

数字はほとんど同じなのに、マウスに置いた手が動きません。よくある相談を組み直した、架空の場面です。

使うために積み立ててきたお金のはずです。それでも、出口の手前で止まります。

昔の僕なら、売らない側に立っていたと思います。積み立てた口座からお金が出ていくことを、失敗だと感じていました。退場だと思っていたんです。

この記事では「全部売る」「毎年売る」「積立を止める」の三択を同じ軸で比べて、条件ごとの第一候補まで置きます。動画で話した三択に、動画に入らなかった条件別の表を足しました。

動画で見る

何で比べるかを、先に決める

比べる軸は3つに絞ります。軸が増えるほど、決められなくなるからです。

  • 最初の支払いに間に合うか
  • 支払う金額が決まるか
  • 値上がりに乗れるか

見ない軸も、先に言っておきます。「どれがいちばん増えるか」は、今回は見ません。増え方の予想を入れた瞬間に、答えが相場しだいになるからです。

条件を、よくある相談を組み直した架空の例として置きます。

今回の架空モデル

・NISAの評価額は約200万円(値上がり分を含む)
・子どもは春から私立高校へ。学費は年60〜70万円、3年でおよそ200万円(1年目70万円・2年目65万円・3年目65万円と置きます)
・住宅ローンがあり、家計に大きな余裕はない
・大学のお金は、別に現金で確保済み
・積立は月3万円・5万円・6万円の3案で見ます
・季節は冬。合格は決まっていて、入学金の納付は数週間後、1年目の学費は春から

※制度や選択肢を比べるための架空の条件です。実在の人物・数値ではありません。

教育費の200万円を、36か月で割ってみます。1か月あたり5万5,556円。

固定費がもう一つ増える、と考えるとわかりやすいかもしれません。それが3年続きます。

200万円もない、という人のほうが多いと思います。自分の残高に置き換えれば、見る順番は変わりません。

同じ入り口に立っている人は、少なくないはずです。2025年12月末のNISA口座は、金融庁の調査で2,821万口座。金融庁は、18歳以上の国民の4人に1人にあたる、と説明しています。

三択を、同じ3つの軸で並べる

同じ軸で並べると、どこが強くてどこが弱いかが見えてきます。表で確かめてください。

先に見てほしいのは、いちばん左の「間に合うか」の列です。

最初の支払いに間に合うか 支払いの金額は決まるか 値上がりに乗れるか
全部売る 間に合う 決まる 乗れない
毎年売る 間に合う 相場しだい(下がっていれば足りないことも) 残した分は乗れる
積立を止める 間に合わない(数か月分だけ) 決まる 今ある分は乗れる(止めたあいだは買い増さない)

どの案にも、強い列と弱い列があります。順位は条件で入れ替わるので、ここで勝ち負けは決めません。

全部売る

200万円を現金にして、学費の口座へ移す案です。支払いの心配は、ここで終わります。

この先の値上がりには乗れません。代わりに、払う額が動かなくなります。

毎年売る

残した分が増え続けるなら、これがいちばん得ではないか。そう見えます。

毎年春に取り崩す額を、200万円を3等分した約66万7,000円と置いてみます。実際は1年目が重いのですが、ここでは均等にしました。

毎年、約66万7,000円を先に取り崩し、残りが年5%で増え続ける、かなり順調な仮定を使います。それでも3回目を払い終えて手元に残るのは、約10万3,000円。増える前提を置いても、ほとんど使い切りでした。

値動きの影響を見るために、最初の売却の前に20%下がっていたら、と考えます。200万円が160万円まで減って、40万円届きません。

この案を選ぶと、支払いの予定を相場に預けることになります。

積立を止める

積立をやめて浮くお金は、月額×36か月の単純計算です。月3万円なら、3年で108万円。月5万円なら180万円、月6万円なら216万円。

3年の合計で見るかぎり、月5万円の人はほぼ足ります。

ただ、最初の支払いは冬から春に来ます。入学金と1年目の学費までに用意できるのは、数か月分だけです。

早春の朝。桜が咲きはじめた通学路の奥に、学校の門が見える

分かれ目は、金額ではなく支払日だった

ここまでは、どれも金額の大きさで比べていました。分かれ目は、別のところにありました。

私立高校の入学金は、全国平均でおよそ17万円。納めるのは入学のときで、一括です。東京都の平均で見ると、およそ25万円。学校や地域で幅があります。

学習費がいちばん重い学年も、1年生でした。入学金を納める日は、合格から数えて決まります。家計の都合で3年に伸ばせるお金ではありません。

春の一時金は、36か月では割れません。3年ぶんの総額を作れることと、入学の朝までに間に合わせることは、別の話です。

めぇまま

うちも子どもがひとり。春だけは、まとめて出ていくのよね。
36で割った数字は、たしかに落ち着くわ。でも、それ、時間のほうは入ってる?
私なら、家計ノートの新しいページに「いつ」と「いくら」だけ先に書くと思う。

そこで、4つ目の置き方が出てきます。三択のどれかを丸ごと選ぶのではなく、支払日までに足りない分だけを売ります。

支払日までに必要な教育費から、教育用の現金と、積立を止めて作れる額を引きます。残った分が、売る額です。

この式に、株価の予想は一度も出てきません。

条件別の、第一候補

自分に近い行を左から探して、その右を見てください。1年目に必要な額を70万円と置いた場合の、第一候補です。

あなたの条件 第一候補 理由
教育用の現金がなく、支払日まで数週間 不足分だけ売る(70万円) 積立を止めて作れる額が0円だから
教育用の現金が20万円ある 不足分だけ売る(50万円) 70万円から20万円を引けるから
教育用の現金がなく、支払日まで3か月あり、積立を止められる 不足分だけ売る(55万円) 3か月で15万円を作れるから
教育用の現金がなく、支払日まで半年あり、積立を止められる 不足分だけ売る(40万円) 半年で30万円になるから
教育用の現金40万円と、半年の積立停止 売らなくていい 30万円と合わせて70万円に届くから
値動きを見続けたくない 全部売る(200万円) 払う額が決まるから。値上がりには乗れない

3か月で15万円、半年で30万円というのは、月5万円を止めたときの数字。月3万円で置き換えるなら、5か月ぶんと10か月ぶんにあたります。

教育用の現金が20万円あるだけで、売る額は50万円に下がります。半年ぶん積立を止められるなら、40万円です。

1年目に必要な額が70万円でない人は、自分の額から同じ2つを引いてください。引く順番は変わりません。

毎年売る案を第一候補に置いた行は、今回はありません。毎年の売却で手にできる額が、相場しだいになるからです。ここは僕の見方であって、正解ではありません。

この決め方が向かない人

合わない場合を先に書いておきます。当てはまるなら、表の行を選ぶより前に、見るところが別にあります。

大学のお金を別に用意できていないなら、高校の3年間だけでは決められません。大学まで含めた総額から、口座に残す額を見直すほうが先です。

家計に余裕があって、積立を続けたまま現金で払えるなら、売る場面そのものがありません。ここに置いた手順は、現金だけでは届かない人のためのものです。

積立を止めても手元に現金が残らないなら、順番が違います。家計のほうを先に見るほうが近道かもしれません。僕がやめたことは、貯金ゼロから100万円までの話に書きました。

夜のえんのカウンター。無地の紙が2枚と万年筆、湯気の立つカップ

売る額を出す、4つの手順

紙は1枚でいいです。上から順に書いていくと、最後に残った数字が売る額になります。

書きこむのは3つだけ。「いつ」「いくら」「月いくら」。相場の見通しは、どこにも入りません。

順番どおりに書くこと自体が、判断を軽くしてくれます。何を売るかではなく、何を引けるかを数えるだけになるからです。

毎年、売る額を出す手順

  1. 支払日と必要額を書く 入学金と学費を1行ずつ
  2. 教育用の現金を引く 別の目的の現金は入れない
  3. 積立を止めて作れる額を引く 月額×支払日までの月数
  4. 残った不足分だけ売る 受け渡しの日数を見て少し前に

3つ目の手順までを、この例に当てはめます。入学金の納付までは数週間しかないので、積立を止めて作れる額は0円と置きました。安全側に寄せた見方です。

教育用の現金も、この例ではゼロでした。引くものがないので、必要額がそのまま残ります。

引く順番を入れ替えても、答えは変わりません。それでも現金と積立停止を先に置くのは、売る額を最後に残したいからです。

支払日が決まっているぶん、迷う場所はそれほどありません。金額を決めるというより、書き写す作業に近くなります。ここまでの3行が埋まれば、残りは引き算になります。

3年間では、いくら売ることになるか

1年目に売る額(この例の場合)

約70万円

200万円のうち、入学金と1年目の学費にあてる分

残りのおよそ130万円は、口座に置いたままです。

同じ手順をもう一度やるのは、次の春が来る前です。毎年の見直しが、この決め方の本体だと思っています。1年目に全部を動かさなければ、次の年にもう一度考え直せます。

月5万円の積立を止めた場合の3年間を、表にまとめました。値動きはないものとした単純計算です。

支払い 必要な額 積立を止めて作れる額 売る額
1年目(入学時) 70万円 0円(入学まで時間がない) 70万円
2年目の春 65万円 60万円(5万円×12か月) 5万円
3年目の春 65万円 60万円(5万円×12か月) 5万円

合計すると、3年間で売るのは80万円。2年目からは、止めた積立が支払いの大半を引き受けます。

止められる額が大きいほど、売る合計は小さくなります。月3万円なら128万円、月6万円なら70万円。月6万円の人は、1年目を乗り切ったあと、売らずに済む計算です。

僕の選択

正解としてではなく、僕の選び方として書きます。

僕なら、子どもを優先して取り崩します。全部ではなく、必要な日に間に合う分だけ。

使うときに使えないお金に、僕は意味を見つけられませんでした。昔、投資に回しすぎて生活費が足りなくなったことがあります。増やすほうばかり見ていて、何のために貯めていたのかを忘れていました。

売ることを退場だと思っていたころは、この4つの手順を書けなかったはずです。

向いているのは、大学のお金を別に用意できていて、支払日がもう決まっている人だと思います。

これは僕の選択で、正解ではありません。選ぶのは、あなたです。

朝の玄関。真新しいローファーと通学かばん、畳んだ紺のブレザー

よくある質問

売ったら、NISAの非課税の枠はなくなりますか?

今のNISAでは、売った分の枠が翌年に戻ります。戻るのは、売った商品を買った値段(簿価)の分です。

100万円で買ったものが120万円に増え、それを売ったとします。翌年に復活する枠は100万円。増えた20万円は戻りません。

注意が2つあります。復活するのは枠であって、現金が戻るわけではないこと。枠を使えるのは翌年からで、年間投資枠——その年に新しく買える上限——に足されるわけでもないことです。

旧NISA(2023年まで)で買った分は、この復活の対象外です。売っても枠は戻りません。

無償化で、授業料はタダになりますか?

国の就学支援金——授業料の分を支援するしくみ——は、2026年度から所得制限がなくなりました。私立高校(全日制)の支給の上限は、年45万7,200円です。

対象は授業料だけ。支給は上限までなので、授業料がそれより高い学校なら差額は残ります。入学金、施設費、制服、通学の定期、修学旅行、それに塾。これらは支援の対象に入りません。

文部科学省の調査(2023年度の実績)だと、私立高校は授業料を除いても年約55万円。学校に関係するお金だけの額です。塾や習い事まで入れると、年約90万円になります。

支援金は、家の口座に振り込まれるわけでもありません。学校が受け取り、授業料と相殺するのが基本です。いったん払って、あとで戻る形の学校もあります。

売ってから、お金はいつ使えますか?

現金になるまで、商品や証券会社によって数日かかります。支払日の少し前に動くほうが、間に合わせやすいです。

今の前提での答えは、こうなります。1年目の分だけ売って、積立を止めます。残りは口座に置いたまま、次の春の前に同じ手順で見直します。

前提が変われば、答えも変わります。大学のお金の置き場所が動けば、残す額も動くはずです。

これから相場がどう動くかを、当てなくても決められます。見るのは、支払日と金額の2つです。

出典・計算方法

この記事の数字の出どころと前提:
・就学支援金の上限(私立高校・全日制 年45万7,200円)と所得制限の撤廃(2026年4月〜): 文部科学省「高等学校等就学支援金制度」(2026年度制度)。対象は授業料で、入学金・施設費などは対象外です。 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/mushouka/1342600.htm
・授業料以外の学校関係の費用(年約55万円)と、塾・習い事まで含めた額(年約90万円): 文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」(2023年度実績・2026年1月16日訂正版)の私立高校の学習費総額117万9,261円の内訳から計算しました。制度の金額は2026年度、統計は2023年度の実績で、時点が異なります。 https://www.mext.go.jp/content/20260116-mxt_chousa01-000039333_1.pdf
・私立高校の入学料(全国平均16万5,898円): 文部科学省「私立高等学校(全日制)の初年度授業料等」令和6年度(2024年12月公表)。東京都の平均25万4,599円は、東京都「令和8年度都内私立高校の学費の状況」(2025年12月公表)。
・NISAの枠の復活(売却した商品の簿価分が翌年以降に復活し、年間投資枠には上乗せされない): 金融庁「NISAを利用する皆さまへ」(令和7年9月改訂)。 https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/nisa2024/slide_202406.pdf
・NISA口座数(2025年12月末 2,821万口座): 金融庁「NISA口座の利用状況調査」(2026年7月3日公表)。 https://www.fsa.go.jp/policy/nisa/20260703.html
・「18歳以上の国民の4人に1人」という説明: 金融庁の顧客本位の業務運営に関するモニタリング資料(2026年7月29日公表)。
・売却から現金になるまでの日数: 商品と証券会社によって変わります(おおむね数営業日)。利用先の案内で確かめてください。
・この例は、よくある相談を再構成した架空のケースです。月割り(200万円÷36か月)、毎年売る案(年5%)、下落20%、積立を止めて作れる額(月額×月数)、条件別の第一候補の表は、税金・手数料・値動きを入れない単純計算です。年5%と20%の下落は、値動きの影響を見るための仮定であって、予想ではありません。
・旧NISA(2023年まで)で買った分については、売っても枠は復活しません。
・個別の商品の勧誘でも、投資助言でもありません。将来の結果を保証する数字ではありません。