2026年8月29日
週休3日にすると、手取りは月いくら減る?年収480万円で計算してみた
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金曜の夜。ひとりの会社員が、退社の前に社内メールをもう1通だけ開きます。
件名は「選択的週休3日制の試行について」。本文は3行。希望者は週4日勤務を選べます。そのかわり、給与は所定の日数に合わせて見直されます。
この会社員は実在しません。週休3日を数字で見るために、この記事のためだけに用意した人です。名前もないので、ここでは「この人」と呼びます。
読んだ直後に浮かんだ言葉は、ひとつでした。「年収、2割も減るのか」。
そこから1年、この人が何を並べて、どう決めたのかを追いかけます。
上の動画の文字版です。動画では流れていく内訳を、止めて確かめられるようにしました。判定表と、変えた1年目だけに起きることも足しています。
今回の架空モデル
この記事のためだけに組んだ、架空の一人です。40歳・独身・扶養家族なし・東京都に住む会社員。
週5は1日8時間で月給40万円、年収にして480万円。週4も1日8時間で、月給32万円・年収384万円。所定の日数が5分の4になれば月給も5分の4、という置き方です。
残業・賞与・通勤手当はどちらにも入れません。社会保険は厚生年金と協会けんぽ東京支部、雇用保険は一般の事業として計算します。控除は社会保険料と基礎控除のみ。料率と等級は2026年度の水準のまま10年間動かさず、税だけ2028年以後の基礎控除を反映しています。
※制度や選択肢を比べるための架空の条件です。実在の人物・数値ではありません。
給与を減らさない型の週休3日制もあります。この人が見ているのは、時間も給与も減る型のほうです。
この人の、変更前の1か月
週5で働くこの人の手取りは、月に約31万1,000円。
家賃と光熱費と食費を払って、少し貯めて、月末に少し残ります。家計で困っているわけではありません。
詰まっていたのは、時間のほうでした。
平日にしか開かない窓口へ行けません。歯の治療が、いつまでも終わりません。土日は、平日にできなかった用事で埋まっていきます。
週に1日、平日の休みがほしい。この人がそう考える理由は、そこにあります。これも数字を動かすために置いた架空の条件です。
そこへ、金曜のメールが届きました。
週5のままか、週4か
並べるものは2つです。額面ではなく、手取りで並べます。
年収480万円と384万円。額面の差は96万円あります。
けれど、この96万円がまるごと暮らしから消えるわけではありません。減る96万円のぶんにも税と社会保険料はかかっていたので、そちらも同時に軽くなります。
次の表は、いちばん下の行だけ見てください。
| 1年ぶん(2026年・2027年) | 週5(年収480万円) | 週4(年収384万円) |
|---|---|---|
| 額面 | 480万円 | 384万円 |
| 社会保険料 | 762,000円 | 595,200円 |
| 所得税(復興特別所得税等を含む) | 81,500円 | 50,800円 |
| 住民税 | 223,300円 | 163,100円 |
| 手取り | 約373万円 | 約303万円 |
手取りの差は、年約70万円でした。
額面では96万円の差だったので、26万円ぶんは税と社会保険料が引き受けた、という言い方もできます。額面の2割減が、そのまま暮らしの2割減にはならないということです。
年70万円は小さい額ではありません。年の単位のままだと大きさがつかみにくいので、1か月あたりに直してみます。
週5と週4の、手取りの差
約5.9万円
月の手取り約31万1,000円と約25万2,000円の差(この記事の条件・2026年時点)
円に直すと、5万9,000円ほど。
額面の差が月8万円で、手取りの差が月5万9,000円。このずれが、額面と暮らしのあいだにあります。
僕がこの計算をして、いちばん意外だったのがここでした。額面の減り方と手取りの減り方は、同じ速さでは動きません。知っているつもりでいたのに、数字を並べるまで、ずれの大きさが実感できていませんでした。
同じずれは、増える側でも起きます。上がった分がどれだけ手元に残るかは、年収が50万円上がったときの記事で年収帯ごとに出しました。
10年たつと、700万円と520日になる
差は毎月続きます。10年ぶんを足すと、手取りの差は約700万円。
同じ10年で、休みは520日増えます。1年は52週なので、1年で52日。時間にすると4,160時間になります。
700万円を520日で割ると、増える休みの1日あたりの値段になります。約1万3,500円。8時間で割れば、1時間あたり約1,680円です。
通勤の往復にかかる1時間も働く時間に数えると、1時間あたりは約1,490円まで下がります。何を勤務時間に含めるかで、この値段は動きます。
休みに値札を付ける計算です。書いていて、少し落ち着かない気持ちにもなりました。
それでも、この数字には使い道があります。「1日1万3,500円で、その日を買うか」と置き換えると、答えが出しやすくなるからです。金額の大小より、買いたいかどうかのほうが、自分で決められます。
らんたん
ちょっと比べてみてもいい? 私はこういう差を、すぐ表にしたくなる。……でも月で見た顔と、10年で見た顔が別人すぎて、そのたび手が止まるの。
同じ差でも、月で見るか10年で見るかで、大きさの感じ方が変わります。どちらが正しい見方というわけではありません。両方を並べておくと、あとで自分がどちらに引っぱられたのかが分かります。それだけでも、決めたあとの後悔は少し軽くなると思っています。
決め手になったのは、25万2,000円で回るかどうか
この人が最後に見たのは、96万円でも70万円でもありませんでした。
週4の手取り、月約25万2,000円。それだけです。
年収がいくら下がるかは、選べるかどうかを決めません。決めるのは、その手取りで自分の暮らしと貯蓄が回るかどうかです。
次の表から、自分の行をひとつだけ探してください。
| 必要生活費+残したい貯蓄 | 週4の手取り(月約25万2,000円)との差 |
|---|---|
| 18万円 | 約7万2,000円の余白 |
| 20万円 | 約5万2,000円の余白 |
| 22万円 | 約3万2,000円の余白 |
| 25万円 | 約2,000円の余白 |
| 27万円 | 約1万8,000円の不足 |
| 30万円 | 約4万8,000円の不足 |
上のほうの行にいるなら、選択肢として置けます。下のほうの行にいるなら、いまの家計のままでは回りません。
回らないことは、失格ではありません。順番の問題です。入ってくるお金の前に、出ていくお金のほうを見るほうが近道になります。固定費から先に削った話は、貯金ゼロから100万円までの記事にまとめました。
もうひとつ、10年ぶん働いたあとの厚生年金にも差が出ます。この条件だと、報酬比例の部分で月約4,900円。小さくはありませんが、これだけで決めるほどの大きさでもない、というのが僕の見方です。
3か月目、この人は通帳を開いた
決める前に、この人がやったことがあります。
週4の手取りで暮らせるかどうかは、週5のままでも確かめられます。
毎月5万9,000円を、使う前に別の口座へ移します。残った約25万2,000円で暮らします。3か月続けて、通帳を見ます。それだけです。
3か月で17万7,000円たまりました。赤字は出ませんでした。
このお金は、ただの貯金ではありません。変えた1年目に出てくる読めない支出を、そのまま受け止める余白になります。
うまくいかなくても、失うものがありません。給与は週5のままだからです。
決めるより先に、答えのほうを試せます。
働き方を変える前に、暮らしのほうを試着します。この人が選んだのは、その順番でした。あくまでこの人の条件での話で、誰にでも合う順番だとは思っていません。
変えた1年目にだけ起きたこと
この人は週4を選びました。ここからは、変更後の数字です。
10年ならした話には出てこないものが、最初の1年には出てきます。
住民税です。
住民税は、前の年の所得をもとに計算されます。そのため給与が下がった直後も、しばらくは前の年——週5だったころ——の水準のまま引かれます。
さきほどの表で、住民税の差は年60,200円でした。1か月ぶんでは、約5,000円。
最初のうちは、見込んだ手取りに月5,000円ほど届かない月が出ます。この人は、先によけておいた17万7,000円でその時期を越えました。
逆に、減らないものもありました。年次有給休暇です。
所定労働時間が週30時間以上(4日×8時間=32時間)であれば、勤務日数によらず、通常の労働者と同じ付与区分になります。有給も5分の4になると思っていた人には、いい知らせだと思います。勤続年数や出勤率といった条件は別に決まっているので、そこは勤め先で確かめてください。
増えた52日が、全部そのまま自由になるわけでもありませんでした。祝日や会社の休みと重なる日があります。家事も、通院も、家族の用事も入ります。
カレンダーの上で白い日と、自分のために使えた日は、たぶん一致しません。
それでも、平日の窓口に行ける日があること自体に意味があります。使えた日数より、選べる日が増えることのほうが、たぶん効きます。
らんたん
1年後の話を先に聞けるのは、少しずるい気もする。……でも私は、来月の私が困らないなら、たぶんそっちを選ぶ。減った金額より、疲れ方のほうが気になるから。
働き方の話は、金額だけでは決め切れません。数字はそこまでを引き受けて、残りは条件と気持ちに渡します。この記事でできるのは、その手前までです。
この例が当てはまる人と、当てはまらない人
この人の1年は、この人の条件でだけ成り立ちます。
当てはまりやすいのは、単身で、動かしにくい固定費が小さく、勤め先に戻れる制度がある人。不安の正体が金額であるうちは、金額のほうで確かめられます。
当てはまらないのは、扶養家族がいる人です。税も社会保険も生活費も、この記事の前提とは異なります。家賃や住宅ローンのように動かせない固定費が大きい人も同じです。判定の線は、もっと厳しいところに引かれます。
所定労働時間が週30時間を下回る形にするなら、有給の付与も社会保険の扱いも変わります。
戻れる制度がない勤め先なら、この順番自体が使えません。予行がうまくいっても、選んだあとに引き返す道がないからです。評価や昇進でどう扱われるかも、数字では出てきません。数字より先に、就業規則を確認し、人事に問い合わせるほうが先だと思います。
僕は長いあいだ、収入さえ増えれば安心も増えると思っていました。増える側だけを見ていて、その増えた分が最後にどこへ消えるのかは見ていませんでした。いまは、安心は金額そのものではなく、選び直せる状態のことだと思っています。
ここまでの答えは、条件つきの暫定です。
単身で、動かせない固定費が小さく、勤め先に戻る道がある。その条件なら、週4は「試してから決められる選択肢」でした。この人の場合は3か月の予行で赤字が出ず、そのまま変えています。
条件がひとつ変われば、答えも動きます。扶養家族がいれば動きます。固定費が重ければ動きます。戻る道がなければ、試すより先に確認するほうが早い。
だから今日、二択のどちらかに決めなくて大丈夫です。10年の合計ではなく、来月の1か月ぶんだけを見ます。必要生活費と残したい貯蓄を足した1行があれば、あなたの家計でも見当はつきます。週4を考えていない人にも、その1行は使えます。
捨てないパン屋
田村陽至さんが、パン屋の仕事を見直していく本です。売上を伸ばすことだけでなく、作る量や働き方を変えることに目を向けられます。
僕が使っているもの(読んだ本。読んでよかった本として挙げています)
向く人:働く日数や量を減らす選択を、数字の外側からも考えたい人。
向かない人:会社員の制度(週4勤務の規則や社会保険)の実務を知りたい人。この本は、個人のお店の話です。
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2026年9月時点の情報です。価格や在庫は、販売ページで確認してください。
出典・計算方法
参照はすべて2026年8月時点で確認しています。
給与所得控除=国税庁「No.1410 給与所得控除」。基礎控除=国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」(2026年・2027年は104万円、2028年以後は62万円)。所得税率=国税庁「No.2260 所得税の税率」。社会保険料=全国健康保険協会「令和8年度 東京支部 保険料額表」(40〜64歳・介護保険第2号被保険者を含む本人負担)と厚生労働省「令和8年度 雇用保険料率」。住民税=東京都主税局(所得割10%・基礎控除43万円・調整控除2,500円・均等割等5,000円)。週休3日制の3つの型=厚生労働省「働き方・休み方改善ポータルサイト」。年次有給休暇の付与区分=厚生労働省・都道府県労働局の年次有給休暇Q&A。厚生年金の報酬比例部分=日本年金機構。
前提: 本文の架空の条件(40歳・独身・東京都・賞与なし・残業なし・控除は社会保険料と基礎控除のみ)による単純計算です。手取り=額面−社会保険料−所得税−住民税。10年の合計は料率と等級を2026年度水準で固定し、税だけ2028年以後の基礎控除を反映しました。年金の差は、標準報酬月額の差9万円×5.481/1,000×120か月÷12で出した報酬比例部分の概算です。物価の変動・昇給・転職・制度改正は含みません。
丸め方: 単独の金額は切り捨てたうえで「約」を付け、2つの金額の差のほうは、丸める前の数字から四捨五入しました。判定表の余白と不足は、計算をたどれるように、表に出している約25万2,000円から生活費を引いた差で出しています。
この記事は、特定の働き方や金融商品をすすめるものではありません。将来の金額を保証するものでもありません。制度は改正されます。判断の前に、勤め先の就業規則と、お住まいの自治体・年金事務所で最新の情報を確かめてください。
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