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2026年9月3日

家賃はもったいない?賃貸と持ち家の30年を、同じ条件で比べてみた

家賃は捨てるお金で、ローンは貯金になる。長いあいだ、僕はそう思っていました。

同じ街の同じ広さで、借りた30年と買った30年を並べたら、そうとは限りませんでした。支出だけを見ると、借りた側のほうがずっと少なく払っています。かわりに、買った側には値段のついたものが残ります。

だから答えは、買った日ではなく、手放す日のほうへ寄っていきます。

この記事であなたが決められるのは、ひとつです。あなたの家賃と、気になっている物件の価格なら、30年後にいくらで売れれば並ぶのか。その線を1本引くところまでを、一緒にやります。

動画で見る

動画では家賃9万円・3,000万円の1ケースだけを計算しました。ここでは条件をひとつずつ動かして、16通りまで広げています。

この記事の結論

買うか借りるかは、毎月の支払いでは決まりません。効いてくるのは、30年後にその部屋をいくらで手放せるか。ここ一点です。この記事の条件では、買った値段の約85%で売れたときに、借り続けた場合とちょうど並びました。

比べる軸は、3つだけにします

住まいの比較は、軸を増やすほど決まらなくなります。先に3つへ絞ります。

1つめは、30年で出ていくお金の合計です。家賃だけ、返済だけを見るのではありません。住むために外へ出ていったお金を、ぜんぶ足します。

2つめは、30年後に手元へ残るもの。借りた側には何も残らず、買った側には部屋が残ります。その部屋がいくらになるかが、この記事の分かれ目そのものです。

3つめは、動きやすさ。転勤、家族の増減、街との相性。住み替えたくなったときに、どれくらいの手間で動けるかという軸です。

上の2つは、金額で答えが割れます。3つめだけは、金額の表に出てきません。

条件は、こう置きました。

今回の架空モデル

住む人: 40歳・2人暮らし・首都圏の郊外。同じ街の同じ広さの部屋で、借りる場合と買う場合を並べます。

借りる側: 家賃7.5万円。30年ずっと同じ家賃という置き方です。更新料・引っ越し費用・礼金は数えません。

買う側: 中古マンション2,400万円。頭金250万円と諸費用160万円を現金で払い、残りの2,150万円を30年のローンにします。金利は全期間固定の年3.29%で、30年間ずっと変わらない借り方です。返し方は元利均等——毎月の返済額が最後まで同じになる形にしました。

毎月と毎年かかるもの: 管理費 月1万円、修繕積立金 月13,054円、固定資産税等 年8万円。この3つも30年据え置きです。住宅ローン控除は、省エネ基準を満たさない中古を買ったときの条件で計算しています。

数えないもの: 物価の上がり方、運用、売るときの費用。

※制度や選択肢を比べるための架空の条件です。実在の人物・数値ではありません。

今回は見ないものも、書いておきます。住み心地、家族の思い出、将来その部屋がいくらになるかの予想。この3つは数えません。

はじめの2つは、金額に直すと嘘になるからです。最後のひとつは、この記事の中心にいちばん近いのに、誰にも当てられません。

だから予想はしないで、「いくらで売れれば並ぶのか」という線だけを引きます。線なら、前提さえ書けば、誰でも同じ場所に引き直せます。

30年の合計は、2,700万円と約4,734万円でした

先に月々から見ます。借りる側の毎月は、家賃7.5万円です。

買う側は返済9万4,042円に管理費と修繕積立金が乗って、約11.7万円になります。差は月約4.2万円。

これを30年へ伸ばします。やり方は簡単で、いまの家賃に360をかけるだけです。7.5万円なら2,700万円、9万円なら3,240万円。あなたが30年で住まいに払う予定の金額が、それで出ます。

買った側の30年は、約4,734万円でした。物件の値段は2,400万円なのに、支出は倍近くまで届きます。

次の表では、増えたぶんの中身だけを見てください。

30年で出ていくお金(買う側) 金額
頭金 250万円
購入の諸費用 160万円
ローンの元本 2,150万円
ローンの利息 約1,235万円
管理費(月1万円×360か月) 360万円
修繕積立金(月13,054円×360か月) 約469万円
固定資産税等(年8万円×30年) 240万円
住宅ローン控除 −約130万円
合計 約4,734万円

部屋の値段として残るのは、頭金と元本を足した2,400万円です。

残りの約2,334万円は、利息・管理費・修繕積立金・税金・諸費用。住宅ローン控除で戻った分を引いたあとの金額で、どれも部屋の値段にはなりません。

利息の約1,235万円は、お金を借りた代金です。管理費360万円と修繕積立金の約469万円は、建物を保つための代金でした。払う先が違うだけで、家賃と同じように出ていきます。

持ち家にも、消えるお金があります。

支出だけなら、借りた側が30年間ずっと前にいます

途中の年で切っても、この形は変わりませんでした。

10年で切ると、賃貸900万円に対して買う側は約1,764万円。20年なら1,800万円に対して約3,249万円です。

ここまでを、左右に並べておきます。下のカードでは、「30年後に残る」の行を見てください。

同じ街の同じ広さで、30年

借りる買う
月の支払い7.5万円約11.7万円
30年の支出2,700万円約4,734万円
30年後に残るなし部屋
住み替えいつでも売る相手が要る

「家賃はもったいない」という言葉とは、向きが逆です。もったいないと言われてきたほうが、少なく払っていました。

月の差4.2万円を30年ぶん積むと、約1,515万円になります。支出の差は、それよりも大きくなりました。

頭金と諸費用と固定資産税が、毎月の支払いの外側に乗っているからです。住宅ローン控除で戻る分を引いても、差は残りました。

なお頭金250万円は、手元の現金から出す置き方にしています。手元のお金を、どこまで住まいへ回すか。貯金と投資、どっちに回す?で書いた「先に生活費の何か月分を置くか」と、同じ場所にある問いだと思います。

夕方のマンションの廊下。外廊下の手すりの向こうに、住宅街の屋根と低い日が見えている

では、いくらで売れれば並ぶのか

ここまでは支出だけの話でした。買った側には、まだ数えていないものがあります。

30年後にその部屋を売れば、お金に変わります。

支出の差は約2,034万円でした。つまり手取りで約2,034万円になったとき、買った側は借りた側とちょうど並びます。これを上回る値段で売れれば、買った側の支出のほうが少なくなります。

買った値段は2,400万円。2,034万円は、そのうちの約85%にあたります。

次の数字が、この記事でいちばん重い1つです。

30年後、いくらで手放せれば並ぶか

約85%

買った値段2,400万円に対する割合(この記事の条件・金利3.29%の場合)

この85%が、この比較でいちばん見落とされやすい数字です。築30年を過ぎた部屋が、買ったときの85%で売れる。その前提でようやく並ぶ、という意味だからです。

言い方を変えます。買った側が支出で追いつくには、30年住んだあとの部屋に、買った値段の約85%の値札が付いている必要がありました。

そこで売れるかどうかは、僕には分かりません。将来の値段を当てられる人も、たぶんいません。だからこの記事では売れる値段を予想せず、線だけを引きます。

線は予想より地味です。ただ、線なら自分で確かめられます。同じ街の築30年くらいの部屋が、いまいくらで売りに出ているか。それを見に行けば、85%が届く数字かどうかの見当は付きます。

めぇまま

うちは買った側だけど、30年後に売る話って、したことがないの。売らないつもりなら、その85%は私にはずいぶん遠い数字よね。
私が気になるのは、そのあいだに管理費や積立金が上がっても、毎月ちゃんと払っていけるかどうかのほう。

売る前提かどうかで、同じ85%の意味は変わります。手放す日を置いていない人にとって、この線は自分の外側にあるものです。

かわりに効いてくるのが、毎月の支払いを最後まで続けられるかどうか。同じ数字を見ても、立っている場所で問いが入れ替わります。この記事の3つめの軸が金額の表に出てこないのも、たぶん同じ理由でした。

16マスの早見表から、あなたのマスを1つ

ここが、この記事でいちばん使ってほしいところです。

あなたのいまの家賃と、気になっている物件の価格。その2つが交わるマスに、あなたの分かれ目が書いてあります。16通り計算しました。

下の表から、自分の家賃の行と、価格の列が交わるマスを1つ見つけてください。

家賃\物件価格 1,800万円 2,400万円 3,000万円 3,600万円
6.0万円 約1,598万円 約2,574万円 約3,574万円 約4,582万円
7.5万円 約1,058万円 約2,034万円 約3,034万円 約4,042万円
9.0万円 約518万円 約1,494万円 約2,494万円 約3,502万円
10.5万円 −約22万円 約954万円 約1,954万円 約2,962万円

読み方はひとつです。そのマスの金額が、手数料や税を引いたあとに手元へ残れば、借り続けた場合と並びます。

その金額を上回って売れたなら、買った側の支出のほうが小さくなります。16マスありますが、覚えて帰るのは自分のマス1つで足ります。

左下のマスだけ、マイナスになりました。家賃が10.5万円で、物件のほうは1,800万円と安い場合です。30年後にタダで手放したとしても、支出の合計では買った側が約22万円少ない。そういう意味のマスです。

右上には、買った値段を超えるマスもあります。家賃6万円の人が3,000万円の部屋を買うなら、分かれ目は約3,574万円。買った値段より高く売れないと並びません。

動画で計算した家賃9万円・3,000万円のマスは、この表では約80万円ちがいます。管理費を月1.2万円に置くか、1.0万円に置くかの差でした。早見表の金額のほうも、目安として見てください。

昼の窓辺のテーブル。線だけで描かれた無地の間取り図と鉛筆、冷めかけたお茶が置かれている

金利1.0%と3.29%で、分かれ目は約890万円ひらく

分かれ目をいちばん大きく動かしたのは、借りたときの金利でした。

ここから、条件をひとつずつ動かします。最初は、その金利です。

年3.29%は、2026年8月に全期間固定で借りた場合の水準です(住宅金融支援機構 フラット35)。数年前には、1%台の時期もありました。

次のグラフは、棒の長さのちがいだけ見てください。

金利べつ「30年後にいくらで売れれば並ぶか」

金利1.0%約1,144万円
金利2.0%約1,513万円
金利2.5%約1,709万円
金利3.29%約2,034万円
金利4.0%約2,343万円

金利1.0%なら、分かれ目は約1,144万円。買った値段の48%です。3.29%では約2,034万円で、85%まで上がります。

部屋も家賃も同じなのに、分かれ目は約890万円動いています。

金利は、自分では選べない条件です。ここが、いちばん決めにくいところだと思います。物件は選べます。家賃も、住む街を変えれば動かせます。金利だけは、たまたま借りた年の水準を受け取ることになります。

分かれ目が48%の年に借りた人と、85%の年に借りた人。同じ考え方で同じ部屋を買っても、30年後の答えはここまで離れます。

この二択を動かしているのは、部屋そのものより、借りたときの金利なのかもしれません。

家賃が毎年1%ずつ上がる場合、分かれ目は約1,604万円

毎年1%ずつ上がる。それだけで分かれ目は、約2,034万円から約1,604万円へ下がりました。

次に動かすのは家賃です。ここまでの計算では、7.5万円を30年動かしていません。実際には、少しずつ上がることもあります。

下の表は、いちばん右の「分かれ目」の列だけ見てください。

家賃の置き方 30年の家賃の合計 分かれ目
ずっと7.5万円 2,700万円 約2,034万円
毎年1%ずつ上がる 約3,130万円 約1,604万円
毎年2%ずつ上がる 約3,651万円 約1,083万円

借りる側の支出が増えるぶん、分かれ目は下がります。買った値段に対する割合でいうと、毎年1%で約67%、毎年2%なら約45%です。

毎年1%で上がり続けた場合、30年目の家賃は月約10万円です。

家賃の上がり方を強く置くほど、買う側にやさしい計算になります。ここは、都合よく置かないほうがいい場所だと思っています。

ここまでの3つの軸を、あなたの条件に戻します

30年で出ていくお金、30年後に残るもの、動きやすさ。この3つで見てきました。

条件べつに、どちらから検討するかを並べます。次の表では、自分に当てはまる行を上から探してください。あなたの行が、この記事の出口です。

あなたの条件 先に検討する側 理由
10年以内に住み替えるかもしれない 借りる 購入の諸費用と売るときの費用が、短い期間に集中します
金利1.0%で借りられる 買う 分かれ目が買った値段の48%まで下がります
金利が3%台になる 借りる 分かれ目が85%まで上がり、売値の読みに寄りかかります
いまの家賃が高く、価格の低い部屋が選べる 買う 家賃10.5万円×1,800万円のマスは−約22万円でした
家賃の相場が低い地域に住んでいる 借りる 30年の家賃の合計が小さくなり、分かれ目は上がります
30年後に売るつもりがない この表では決まらない 分かれ目は、手放す日を置いたときの線だからです

「先に検討する側」であって、答えではありません。1行目と2行目のように、逆を向いた条件が重なる人もいます。

そのときは、動く幅が大きいほうの条件から見てください。金利で動く幅は約890万円。住む年数のほうは、分かれ目を動かすのではなく、前提そのものを外します。前提が外れる条件のほうが、いつも強く効きます。

もうひとつ、この表の使い方があります。いまは当てはまらない行を覚えておくことです。

金利は動きます。家賃も、住んでいる街も変わります。今日は借りる側の行にいる人が、数年後には買う側の行へ移ることもあるでしょう。

そのときに見るのは、また同じ3つの軸です。表を作り直せば、あなたのマスも書き直せます。

数えなかったものを、両側とも並べます

数字を並べたので、抜けているものも並べます。どちらの側にも、都合のいい置き方が混じっています。

入れ忘れではなく、同じ条件で比べるために切りました。早見表の金額は、この抜けの上に乗っています。

下の表は、左と右のどちらに抜けが多いかだけ見てください。

数えていないもの 借りる側 買う側
住まいにかかる費用 更新料・引っ越し・礼金 室内のリフォーム・火災保険
出ていくときの費用 退去時の精算 仲介手数料・税など
30年のあいだの値上がり 家賃(別に計算しました) 管理費・修繕積立金
手元のお金を置いた場合 毎月浮く約4.2万円 最初に出した410万円

抜けは両側にあります。ただ、金額が大きくなりやすいのは買う側です。

買う側の抜けを1つ埋めるたびに、必要な売却額は上がっていきます。つまり早見表の金額は、買う側にやさしいほうへ寄っています。

管理費と修繕積立金を30年動かさなかったことも、買う側に有利な置き方です。国土交通省の令和5年度マンション総合調査では、修繕積立金を段階的に上げていく方式がいちばん多いとされています。

ぱぱん

僕はね、資料を読み比べた量が多いほど、自分の読みが当たる気になってしまうんだ。
でも30年後の値段だけは、どれだけ調べても出てこなかったよ。
だから当てにいくのはやめて、外れたときにどうなるかを先に置くことにしている。

外れたときに動けるかどうかは、3つめの軸の話でもあります。売る相手が見つかるまで、買った側はその部屋から動けません。借りている側は、更新のたびに選び直せます。

この差は、金額の表には出てきませんでした。

この比べ方が当てはまらない人

ここまでは「30年、同じ場所に住み続ける」を前提に、お金の面だけを並べてきました。前提のほうが外れる人もいます。

下の表は、自分に当てはまる行があるかだけ確かめてください。

この結論が変わる条件

当てはまる場面 分かれ目はどう動くか
10年以内に住み替えるかもしれない 30年住み続けるという前提そのものが外れる。購入の諸費用と売るときの費用が短い期間に集中し、買う側は重くなる
家賃の相場が極端に低い地域 借りる側の30年の合計が小さくなり、分かれ目は上がる
家賃の相場が高い地域 分かれ目は下がる
金利・管理費・修繕積立金・固定資産税のどれか1つが動く それだけで分かれ目が数百万円動く
相続や実家を継ぐ予定がある 比べる相手そのものが変わる
万一のときに家が残ること、高齢になっても住む場所があることを金額より先に置く 金額の比較の外側。この比べ方は当てはまらない

いちばん下の行が当てはまるなら、分かれ目の金額を出す手前で答えが決まります。金額で測る話ではないからです。

この記事の計算は、お金の面だけを並べたものです。それ以外の部分は、この計算の外側にあります。

どの行にも当てはまらなかったなら、前提はまだ生きています。早見表に戻って、自分のマスの金額をそのまま持って帰ってください。

5つの疑問に答えます

30年も同じ家に住まないかもしれません。それでも同じ計算でいいですか?

途中の年で切っても、支出の形そのものは変わりません。10年なら賃貸900万円に対して買う側が約1,764万円、20年なら1,800万円に対して約3,249万円です。

ただ、10年以内に住み替えるかもしれないなら、30年住み続けるという前提が外れます。買うときの諸費用と売るときの費用。この2つが短い年数に重なるので、買う側はさらに重くなります。

ローンを払い終えたら、住居費はゼロになりますか?

なりません。管理費と修繕積立金と固定資産税は、完済したあとも同じように続きます。毎月の金額に直すと、これくらいでした。

ローンを払い終えたあとも続く住居費(月)

約2.9万円

管理費1万円+修繕積立金13,054円+固定資産税等(年8万円の月割り)。この記事の条件

この2万9,000円は、老後の生活費にそのまま上乗せされます。毎月の生活費が2万円動くと、資産で暮らせる年数はかなり変わります。その計算は3,000万円あれば何年暮らせる?に置きました。

家賃が上がっていくことは、計算に入っていますか?

基準の計算では、7.5万円が30年変わらない置き方にしています。上がる場合は、別に出しました。

毎年1%なら30年の家賃は約3,130万円になり、分かれ目は約1,604万円。毎年2%なら約3,651万円で、分かれ目は約1,083万円まで下がります。毎年1%で上がり続けた場合、30年目の家賃は月約10万円です。

早見表の金額で売れたら、得をしたことになりますか?

ちょうど並ぶ、という意味です。それを超えて売れたときに、買った側の支出のほうが小さくなります。

金額は手取りで見てください。売るときの仲介手数料や税は、この計算に入っていません。買う側で数えなかった費用を足すほど、必要な売却額は上がります。

万一のときに家が残るのは、買った側だけですよね?

金額の表に出てこない差が、ひとつあります。

住宅ローンには団体信用生命保険が付きます。フラット35の新機構団信には、返済の残りが消える仕組みが用意されています。亡くなったときと、所定の身体障害状態になったときです(住宅金融支援機構)。

借りているほうは、そのあとも家賃が続きます。ここは30年の合計にも、分かれ目の金額にも入っていません。心配のしかたが違う、と言ったほうが近いかもしれません。

僕は、いまは買いません

ここからは僕の考えです。冒頭に書いたとおり、僕は長いあいだ、家賃を捨てるお金だと思っていました。

でも内訳を並べたら、買った側にも消えるお金がありました。30年で約2,334万円です。

それでも家賃がもったいないかというと、いまの僕は、そう思っていません。

理由は金利です。分かれ目をいちばん動かす条件が、いまは高いほうにあります。分かれ目が買った値段の85%まで上がる場面で、売値の読めない部屋を持ちたくない。それだけの話です。

ついでに書いておくと、僕は不動産投資もやりません。人付き合いのところが、僕には向いていないからです。住むための家とは別の話ですが、この二択を見る僕の目には、たぶん影響しています。

この考え方が向くのは、住む場所をまだ決めきっていない人だと思います。動ける状態そのものに、いまはお金を払っている。そう考えられるからです。

夜の食卓。開いたままの家計ノートと鉛筆。窓の外に街の明かりが小さくにじんでいる

家を買う人が損をしている、とは思いません。分かれ目の数字を知ったうえで買うなら、それは僕が買わないことと同じ重さの答えです。

僕がやめたのは、どちらが正しいかを決めることのほうでした。かわりに、いくらで売れれば並ぶのかだけを出しておく。それなら、条件が変わった日にもう一度使えます。

住まいのお金を、人生全体の出費のなかへ置き直すと、また見え方が動きます。人生で一番お金がかかるのはどれ?では、住宅を入れた8つの大きな出費を月額つきで並べています。

最初の問いに戻ります。家賃はもったいないのか。

いまの前提での僕の答えは、「もったいなくはない」です。金利が年3.29%で、30年後の値段が読めないあいだは。

前提が変われば、答えも変わります。金利が1.0%まで下がれば、分かれ目は買った値段の48%。そうなったら、僕はこの表を引き直します。

これは期限つきの結論です。

あなたのマスの金額も、金利と家賃が動けば書き換わります。いま選ぶのは30年ぶんの答えではなく、いまの条件での第一候補で足ります。

出典・計算方法

数字の出どころ(すべて2026年9月2日に確認)

金利 年3.29% = 住宅金融支援機構「フラット35」の借入金利(2026年8月・借入期間21〜35年・融資率9割以下の最も多い金利)。

修繕積立金の平均 月13,054円と「段階増額方式が47.1%で最多」= 国土交通省「令和5年度マンション総合調査」(2024年6月公表)。

住宅ローン控除 = 国土交通省「住宅ローン減税Q&A」(令和8年度改正後・2026年7月更新)。省エネ基準を満たさない既存住宅(その他住宅)として、借入限度額2,000万円×0.7%を10年間で計算しました。年末残高が2,000万円を下回る年は、その残高で計算しています(合計 約130万円)。

団体信用生命保険 = 住宅金融支援機構「新機構団体信用生命保険」(2026年9月時点の商品概要。死亡・所定の身体障害状態で残りの返済がなくなる)。

計算のしかた: 本文に置いた架空の条件だけを使った、単純な計算です。ローンは元利均等・360回・繰上げ返済なしとして、償還表から出しました。購入側の30年の支出=頭金+諸費用+ローン総返済額+管理費+修繕積立金+固定資産税等−住宅ローン控除。分かれ目の金額=購入側の支出−賃貸側の支出で、これを30年後の売却の手取り額と比べています。

早見表の置き方: 金利はどのマスも 年3.29%。頭金=物件価格の10.5%(融資率が9割以下になる置き方です)、購入の諸費用=価格の6.7%、固定資産税等=価格÷300(万円・年)。管理費 月1万円と修繕積立金 月13,054円は、16マスとも同じです。頭金と購入の諸費用は、計算に入れる前に万円未満を四捨五入しました(例: 物件1,800万円なら頭金189万円・諸費用121万円)。諸費用と固定資産税等の水準には公的な統計がありません。取引の相場観にもとづく設定値です。

入れていないもの: 賃貸の更新料・引っ越し費用・礼金、購入側のリフォーム費用・火災保険・売却時の費用(仲介手数料・税など)、物価の変動、運用したときの利益、収入や家族構成の変化。将来の物件価格は予想していません。

丸め方: 単独の金額(総額・月額)は万円未満を切り捨てて「約」を付けています。2つの金額の差だけは、丸める前の数字から四捨五入しました。

特定の物件・金融商品・契約をすすめる記事ではありません。将来の金額を保証するものでもなく、金利も制度も変わります。決める前に、金融機関の最新の金利、物件ごとの管理費・修繕積立金・固定資産税、お住まいの自治体の情報を確かめてください。